エンジン故障診断
ロータスヨーロッパ修理の依頼
「セルモーターは廻るが全くエンジンがかからない車があって、ディラーさんに陸送して、イモビライザーとエンジンコンピューターを交換したが、何故かキーの登録が出来なくて、結果エンジンが掛からず”原因不明”として送り返された。プロテックさんで何とかならないか?」という依頼
大都会のディラーさんで原因不明な故障が、周りが360度田んぼの、ド田舎の修理屋でなおるかいなw
車の名前やメーカー自体解らないので調べてみると、ロータスというメーカーのヨーロッパスペシャル225という珍しい車種で、日本には約120台しか存在しないらしい事が判明
ロータスっていうメーカー自体が吸収されているようで、自分の使っているAUTEL診断機でも設定が無いのと、120台しか走っていない車の修理情報は当然、ネットにも見当たらない。
かなりの難問になる予感
「やれやれだよ」
基本はまず問診から
前オーナーは「エンジンがかからないのでは、この車を持っている意味がない」という事で購入した販売店さんに売却、この車両は現在販売店さんの所有。
販売店さんに詳細を聞くと
・最初の現象は、暖気後にエンジン不調になり、再始動できなくなるところから始まった
・原因不明なのでイモビライザーを交換、ECUを交換してみた結果、キーの登録がどうしても出来なくなった
・前ユーザーはイモビをカットする社外部品をつけていたらしい
この3点
人為的な故障の匂いがプンプンする事案ですが、先入観は誤診の原因になるので、事実だけを一つ一つ調べることにします。
まずはダッシュボード、シート、内装を外して「イモビをカットする社外部品」なるものを探すが、結果そういう部品は見当たらず。予想原因の一つがなくなった。
故障コードが判明
次の作業としては普通、イモビとエンジンの故障コード、少なくともデータストリームで状態確認を診断機で出すのですが、メーカーが存在しないので手が出せず。
とりあえず、このメーカーや車の歴史の部分から良く知る事から始めることにしていろいろ調べていくと、なんとこの車は他メーカーとの共同開発であることが判明。
エンジン担当のメーカーの中で、診断機が通信可能な年式の車種を探し出すことに成功
後から思ったのですが、そんな苦労しなくてもEOBDで繋げば一発でたどり着いたのにねw
たどり着いた答えがこちら
出てきた故障コードは
・クランク角センサー
・ブレーキスイッチ
・トランスポンダーキー不一致
イモビが登録できない理由
故障コードが判明すれば直ったも同然ですが、ここで間違ってはいけないのが、どれから直せばよいかという順番
たぶん、ディラーさんは、回転信号が入らない原因を、イモビライザーのせいにして、キーと車体番号が合わせる事を優先してしまったのだと思うんです。
ところがです
販売店さんに取り寄せてもらった配線図を頭が痛くなるまで読み込んだ結果
メーターのエンジンチェックランプとイモビライザーユニットのアースとが合流してエンジンコンピューターに入っていく回路が存在することに気が付きました。どういう意味かというと
「エンジンチェックランプが点灯するような重度の故障(例えばセルは回っているはずなのにエンジン回転信号が検出されない)等が有り続けると、イモビライザーユニットには作動電圧が発生しない、結果キーの判別や登録が出来なくなる設計なのではないか?という予想が立つことになります。
今回の修理、一番先に手を付けるべきなのは、クランク角センサーの良否判定となるんですね
「イモビの故障で回転信号も点火信号も発生しなかったのではなくて、回転信号が発生しないので点火信号もインジェクターも作動せず、イモビも解除できなかった」が正解なのです。解るかなぁ~?
クランク角センサーを交換してみた結果
「クランク角センサーを交換してみた」と一言で言いますが、まずこのロータスヨーロッパsっていう車、なんと!車体の後ろ半分を取り外さないとエンジンに手が入らないんです。
車体を取り外してみたものの、次はクランク角センサーがどこについているかを探し出すのに一苦労
エアコンのコンプレッサーとブラケットを取り外してやっと見つける事が出来ました。
純正品は2か月以上かかってしかも6万円するという事で、エンジン型式から探っていって純正と同じボッシュ品を他ルートで発注(お値段はナイショ)
それでも到着に一か月以上掛かるというので、某大陸系の千円位の社外品を取り寄せて試しに交換してオシロスコープ繋げてエンジンを回してみると、もともとついていたセンサーでは無反応、社外品では見事に波形が観測できました。クランク角センサー故障で間違いないようです。
次の作業はイモビの初期化とキーの登録に進みます。
キーの登録に成功
エンジン回転信号が無事に入るようになったので、トランスポンダーキーの登録に挑戦
キー関係、あんまり詳しく書くわけにいかないのですが、普通にAUTEL診断機で出来ました。
オシロとしても使えるし、イモビも触れるし、なんて便利な診断機‼買ってよかったぁ
やはり、イモビライザーユニットの作動条件はエンジン回転信号が入ることが条件だったようです。
点火火花とインジェクターの作動音をチェックした結果、点火火花も飛び、インジェクターも作動するようになった事を確認できました。
さあ、ついにエンジンの始動。
しかし、、、今回はそれだけで済まない手ごわい故障事例でした。
何がおきたかと、その解決編は次号にて