車検で入庫のマーチ。エンジンは調子よくブレーキの整備も終わり、いざ検査のみとなったマーチ
ところが陸運局目指して走っているとメーター内で黄色く光るランプが!!これだと車検にとおらないってことで工場に引き返して診断機をあてると「クランク角センサー異常との表示。さっそく新品に交換してみたが
ありがちなことでしばらく走行するとまた点灯「新品なのになぜ」となりました

この車両は以前にCVTのベルトの滑りでミッションを交換してあるので、フライホイールについているクランク角検出用の爪が曲がっている可能性があるので、セルモーターを外してトリガーの状態を確認してみたが異常なし

目視だけではいいかげんなので、センサーに診断機のオシロスコープをつないで波形をチェックしてみたが抜けている様子は確認できず。オシロスコープを診断に使うこと少ないと思いますが、原因をはっきりさせるためにはとっても有効です。自分は故障診断を正確に行うために、よく使用します。AUTEL診断機を買うときはセットでつけておくとよいです

AUTEL診断機オシロスコープを使ったクランク角度センサーの診断

取り外したマーチのクランク角センサ、3本の端子があってそのうち一本は5ボルトの電源とアースで残りの一本が信号出力AUTEL診断機マキシシスの付属オシロスコープを繋いで信号波形を見ることができる

クランク角センサーの出力波形をオシロスコープでかくにんしたところ
歯の抜けもなく目立った異常も確認できず。エンジンチェックランプ点灯の原因センサーでもフライホイールの歪みでもないことになる。では何が原因?

故障診断はやっぱり基本点検が大切

マーチの可変バルブ装置、これの汚れによる作動不良が原因でした

20年も整備の世界にいていまだにわすれがちなのが基本点検の大切さ。今回の故障もそのパターンでした
自分の工場で使っている診断機AUTELマキシシスはフォルトが表示される条件を教えてくれる物凄い
親切な診断機でこの機能のために数十万円払ったようなものなので、今回の「クランク角センサー異常
」と表示される条件を見てみると、「カムシャフトの角度とクランク角度が規定値以外のさがあります」ということをしらせています」と診断機が教えてくれました
「カム角度!!」

原因らしきものが、クランク側になければカムシャフトを疑ってみればよいことになりますね

クランク角度に対するカムシャフト角度のいじょうとなれば当然思いつくのは、タイミングチェーン。

実はこの時代のエンジンはタイミングチェーンが伸びやすいのです。マーチのエンジンだけではなく1500ccのエンジンも伸びる車種がありました。修理は高額になりますので気を付けて。エンジンオイルはこまめに交換してくださいね。運転の仕方も無理なエンジンブレーキの使い方はチェーンののびるげんいんになりますよ。優しく優しく
今回の車は日産マーチでしたがトヨタのBbって車もチェーン伸びますよ。その場合エンジンチェックランプではなくミッションの異常として表示されます。
「安心のタイミングチェーン車種」っていう中古車販売店のアピールは半分以上オーバートークです。中古車買うときは
保証つけて買って下さいね。

話がそれました、マーチの修理に戻りましょう。早速新品のタイミングチェーンを取り寄せて、エンジンに付いていたチェーンを外して長さを比べたら、なんと!少しも伸びていませんでした
「さあ弱った。予測した故障原因がひとつもあてはまらないぞ」と困り果てていたらふと思いついたのが
基本整備の大切さ「「タイミングチェーンだのセンサーの出力だの難しいことをしらべるまえに。エンジンのデーターストリームを見るべきでは?」とやっと気が付きました
うちの診断機だけではないと思いますが、まともな診断機はOBDコネクターにつなぐと、エンジンの状態を表示してくれます。その数字がなにをしめしているのかを整備士さんが理解しているかどうか?が次の問題になるのですがこの車のアイドリング時の基本データーを表示してみました

判明した原因

データーを眺めていたら明らかに異常な数値を発見しました
それは「点火時期」
なんとこのエンジンノイグニッションタイミングは圧縮上死点前55度となっていました
普通なら20度付近のものなので55度は異常に早いですね
エンジンをかける時に「何となく重いなぁ」とかんじていましたが点火時期が
こんなにはやすぎるとそうなってとうぜんでしたね

ついに原因が判明

クランク角センサーにもタイミングチェーンにも問題がないのにクランク角度異常と表示されエンジン点火時期モトンチンカンなマーチのエンジン。原因はなんだとおもいますか?

カムシャフト角度を変えてしまう装置

そう「可変タイミング新角装置」
トヨタではVVC、ホンダテではVtechとかあるあれです。

タイミングチェーンを交換しているときから気になっていたのですが、吸気カムの端っこに付いている円錐形のあれ
油圧ソレノイドバルブでカムスプロケットの位置に対してカムシャフト角度を変化させるアレです

「もはやコレしかないだろう」と思って、細心の注意を払ってカムシャフトから外し、分解清掃しました

可変タイミング進角装置
ふだんぶんかいすることもない部分なので興味深々で分解すると油圧ポンプのような感じの内部でした
オイルスラッジがだいぶ溜まってこびりついていたものをきれいに取り除き、カムシャフトに取り付け
タイミングチェーンを元に戻して、タイミングカバーを取り付け、、、ついに作業完成!「長かったー」

エンジンオイルを注入してエンジン始動さて治ったのか?

クランクプーリーやベルト類を組んでオイルを入れて、いよいよ始動
なんと!!重く感じていたクランキングが噓のようにスムーズ!!
ふけ上りも軽いのなんの!!

診断機でのデーターストリームを確認すると点火時期もほぼ20度位で安定しています
どうやら直ったみたい

今回のエンジンチェックランプの点灯の原因は「可変バルブタイミング装置の作動不良であって分解清掃にて
直った」で間違いないようです

修理のその後

その後このマーチは無事車検を通過し納車してからやがて半年たちますが、無事チェックランプも点灯することなく調子よく走っているそうです。めでたしめでたし

ややこしい故障の時ほど基本データーをしっかり見るべき、、、でした

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