ボルボミッションオイルもれ修理の方法

バルブボディのオーバーホールとソレノイドの交換を行ったボルボV70
納車後、走行には全く問題がなかったらしいのですが、「オイルが漏れているようだ」との連絡が入り再修理として入庫することに

ミッション修理時にくどいほど確認したはずなのに、なぜ、、、

ボルボミッションオイル漏れの原因

床にたまったミッションオイル

あんなに確認したのに、なぜミッションオイル漏れを見逃していたのか不思議だったのですが
このミッションオイル漏れは、一定のオイル温度と回転数でしか起こらないようで、実際しばらくしたらピタッとオイル漏れが止まりました。デュアルクラッチのエンジン側のケースの軸が、特定のエンジンの回転の周波数になったときに共振して振れが大きくなった結果、シールの許容範囲を超えて、ミッションオイルが漏れるようです。
こうやって少しずつDCTオイルが漏れていたことで、必要なライン油圧が発生しなくなり、シフトフォークの作動が不良になり、ミッションコンピューターに「出力低下」と判断されて走行できなくなっていたとすれば「冷機時のみに起こる走行不能」だったという事に納得がいきます。暖気後はオイルが膨張して油量が増えるので、結果として故障が起こらなかったと考えられるからです。
やはり修理に一番大切なのは「基本の点検」
最初にオイル量をしっかりチェックせずにバルブボディをはずしはじめてしまったので見逃しました。最初に油量チェックをしっかり正確に行っていれば、最初からミッションを降ろしていたのに、、、
エンジンオイル漏れが同時に起こっていたため肝心のミッションオイル漏れを見逃していました。
いずれにせよ、このミッションで走行不能が発生している場合ソレノイドは交換することにしているので、無駄ではないのですが、大いに反省する点でした。

ミッションを降ろしてみると、オイル漏れの跡がはっきりと、、、

ネット上に、たまにボルボDCTオイル漏れ修理としてこのシールだけ交換している例を見受けますが、このシールプレートだけ交換してもオイル漏れは止まりません。シールプレートを交換して止まるのは最初だけです

ここからのオイル漏れの本当の原因は、デュアルクラッチの入力側のプレートの軸のガタなので、このガタを取り除かねばなりません。

デュアルクラッチのガタつき修正

クラッチの入力側の軸(シールにあたる大きな丸い部分)

このミッションを分解してみたことがある整備士さんなら知っていると思いますが、走行距離を走った車両は、この部分にはとても大きなガタが出ます。いくらシールで抑えようとしても、その大きなガタのせいでオイルが漏れてしまいます。
3センチぐらいの樹脂製の位置決めのシムが摩耗して起こるガタなので、そのシムを交換してやると、ガタがなくなります。

位置決めシムの打ち替え

摩耗を起こし溝が出来た位置決めシム

シムを打ち替え、シールを新品にしてミッションを載せて、診断機で温度管理をしながらオイルを入れます
このミッションのオイルフィルターはミッションケースを割らないと外せないので、ミッション外に交換可能なオイルフィルターが付いています、そのフィルターを新品に交換します。

このフィルター、DTCオイル交換時は必ず替えてあげてください

このミッションは載せただけではまともな変速をしなくなるので、オイルを入れ終わったら診断機を使って初期設定を行ってあげます。ミッション内部に不良なところがあると、この初期化は出来なく設計されています。
今回はスムーズに初期化できました。

ボルボミッション修理の結果

交換したソレノイドバルブと外付けのフィルター(真っ黒)

ボルボミッション初期化

ミッションの初期化(この診断機だとスムーズに出来ます)

ユーザーさんはミッションが故障した当初、ディラーさんはじめ、どこの修理工場でもミッション交換しかないとの見積もりを出されて、それがあまりに高額で、この車を国産の軽四に代替えしようと思っていたらしいですが、お仕事の関係で転勤が多く、ご家族を載せて高速をよく走るとのことで、ボディ剛性と安全性ではどう考えてもボルボのほうが高速では乗りやすくて安全なのと、お子さんがこの車を気に入っているとのことで、最終的に当店にミッション修理を依頼して、このお車にずっと乗り続ける事を選ばれました。

ミッション修理のその後

この修理を終えて納車してからやがて半年でしょうか、ユーザーさんはボルボに載って県外に転勤されていきましたが、無事オイル漏れも収まり、ミッションもスムーズになったボルボは、今も無事走っているようです。

結構な距離を試乗させていただきましたが、このボルボV70、安定感が有って、小排気量ですがシングルタービンのエンジンは力強くて、落ち着いて走れる良い車でした
「多少の事故なら、乗ってる人ケガする事なさそう」って思えるしっかりした車です
日本の最新の車って高性能で壊れないし世界一なの解るんですけど、ちょっと古くても欧州車のほうが断然走ってて安心できて気持ちよいのはやっぱり剛性なんでしょうね

廃車になってしまう車をまた一台復活させることが出来て、自分も満足です。
お大事に。

今でもV40 V60 V70を大切に乗られているユーザーさんもおいでるかもしれません、もしボルボのdctでお困りでしたら相談してくださいね


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