ボルボV70 トランスミッション出力低下警告灯

警告灯点灯と同時に走行不能

ボルボDCTミッション故障診断

ボルボV60やV70に多発するミッション警告灯点灯修理の記録
エンジンが冷えているときに、「トランスミッション性能が低下しています」警告灯点灯と同時に走行不能になるという症状
実際に公道を走っているときにこの症状を体験すると、かなり危険で、事故の恐怖を感じることになります。
本来なら、自動車としてはあってはならない故障だと思います。

まずは現象確認とAUTEL診断機による故障診断
完全に冷えている状態から始動後5分ぐらいで発生しました。
ミッションコントロール系の故障は普通、暖気後に起こる症状なのですが、今回は珍しく、冷機時に起こる症状です。

診断結果

出てきたフォルトコードを見ると、シフトフォークの作動油圧が足りない感じでした。
今回はエンジン出力側の回転センサーの故障コードが入っていなかったので、ユーザーさんと相談した結果、ソレノイドバルブの交換とバルブボディのオーバーホールで経過をみてみる方向で修理することになりました。
(スピードセンサーの故障コードが入っているとその時点でミッション脱着、分解が必要となります)

結局その後、ミッションを降ろすことになるのですが、、、この時点では、テスターには表れない重大な故障が発生しかけている事に気が付いていませんでした、、、なぜ冷機時に起こる故障なのか?という事がのちに判明する事になります。

とにかく、どちらにしても故障したミッションでは必ず行っている、ソレノイドバルブの交換とバルブボディのオーバーホール作業をしてしまいます。
この作業だけなら車載状態で行えますので、ユーザーの費用の負担が少なく抑えられるからです。

ボルボミッション故障修理開始

コアサポートを外してコントロールバルブを脱着

フロントバンパー、コアサポート、ラジエーター等を取り外し、バルブボディのオーバーホールと共に、ミッション内部に溜まった金属粉を極力取り除きます。
このミッションのシフトフォークには、フォークの位置を検出するセンサーに対しての磁石が付いているのですが、その磁石部分に大量の金属粉がくっついてしまいます。正しいシフトの位置を検出させるため、それを取り除く事が必要です(実際に分解してみると、驚く量の鉄粉が付いています)

このミッションを長持ちさせるには、オイルと、外付けのオイルフィルターを定期的に交換する事をお勧めします。

バルブボディのオーバーホール

バルブボディのオーバーホール

バルブボディをオーバーホールします。
場合によってはバルブの摩耗や傷を顕微鏡を使って検査したりします。今回は、走行距離の少なめな中古のミッションから取り外してストックしてあったバルブボディをオーバーホールして、新品のソレノイドバルブを取りつけて使用することになりました。

こうやってバルブボディをオーバーホールした車の変速って、見違えるほどスムーズになるんですよ
なので、同じ車を長く乗りたいユーザーには、とってもお勧めです

余談になりますが、数年前のありえない話で
「ネット上で見つけた某修理屋さんで数十万払って修理してもらったばかりのボルボV〇〇が同じ症状になって走行不能になる。セカンドオピニオンとして診断をしていただけないですか」という依頼があって
ミッションを降ろして分解してみると、十数万円で明細に書かれていた新品になっているはずのソレノイドバルブが全く交換されていなかったどころか、取り付けボルトが締まっておらず油圧漏れを起こしていて、またバルブボディも全く清掃されていなかった事が有りました。おまけに、オイルシールプレートに大量のグリスを塗ってオイル漏れの発生を遅らせようとしてあったり、、、
その時は自分が間に入って事件とならずに収まりましたが、なにもしていない修理に数十万請求するその行為は完全に犯罪なのでやめてほしいですね。
この型のミッション修理はもうほとんど需要がないと思うので、もうそういう被害も出てないでしょうし、記事を読んでいる人にも影響は出ないと思うのでこうやって書いてますけど、、、「ミッションを分解して、この不正に気付く整備士など居ないだろう」と思ってその一台だけついついやっちゃったのでしょうか?それとも、ずっと何台もそうして稼いできたんでしょうか、、、
謎の故障が大好物で、損得抜きで原因を探してしまう整備士さんって、全国探せばいっぱい居ると思うので、絶対バレルから、不正はやめたほうが良いですよ、、、

最近は某トラックメーカーがデーター改ざんしたり、指定工場であるディラーさんがやるべき検査を飛ばしちゃってたり(車検ってそんなに急いでやらなきゃいけないものなんでしょうか?お預かりして時間かけて丁寧に整備したほうがよくない?)
整備業界の闇ですね、、、

DCT修理の結果

バルブボディのオーバーホールとソレノイドの交換を終了し、温度管理しながら規定量のオイルを注入後、診断機を繋いでミッションコントロールの初期化。
走行テストの結果とてもスムーズでショックの少ない、もちろん警告灯も点灯しないとても感じの良いミッションになりました。
デュアルクラッチミッションって、乗っている人だけ解ると思うんですけど、トルコンオートマでは感じられないダイレクトな加速感があって好きなんですよね

この車両は、エンジンオイル漏れの修理依頼も同時に承っていたので、エンジンのオイル漏れも修理して納車させていただきました。
しかし、残念ながら後日再修理として入庫することに、、、基本の点検は抜かしてはいけないのと、発生している故障症状の意味と修理内容とのつじつまが合っていない場合、別の原因が有る可能性が高いという事を改めて考えさせられました。

ボルボDTCミッション修理後編に続く

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