フィアット500

フィアット500デュアロジック故障による、突然のギヤ抜け、走行不能になる症状を予防するための予防整備の記録

デュアロジック故障の原因

在庫で仕入れた水色のフィアット500。
このフィアット500っていう車、デザインが良くて、中古車だと結構手ごろに買える人気のある車なのですが
 デュアロジックという自動クラッチの機構の故障で、突然ギヤが抜け、走行不能になるっていうかなり厄介なトラブルが発生する事がある車種なんです。全ての車両に発生するかというとそうではないらしくて、製造上の当たりはずれらしいっていう、、、イタリヤ車っぽい事なのですが、自分が販売した車がそんなことになってはシャレにならないので、デュアロジックシステム含め、ミッションを分解してメンテナンスしておきました。

デュアロジックの分解

デュアロジック

自動でクラッチを切ったり繋いだりするこのシステムは、バッテリーの下、ミッションの上に乗っかっています。
大きな電動のポンプで発生した油圧でクラッチのレリーズレバーを作動させて、電子制御でそれをコントロールしています。さっそく外していきます。

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今回は、クラッチ内部の整備も行うのでミッションごとの脱着です

黒い丸いの(アクチュエーター)が付いているのがデュアロジックです

ソレノイドへのオイルの侵入

コネクターへのオイルの侵入

ディラーさんに知り合いがいるので聞いてみると、このソレノイドと反対側のセンサーどちらかの配線コネクターにオイルが浸入することにより、誤作動を起こし、結果としてミッションコンピューターがギヤをニュートラルに戻し、変速をストップしてしまうらしいです。
いつも思うのですが、何故欧州車系のミッショントラブルは走行を停めてしまうんだろう?
国産車は3速固定とかになって、せめて路肩に移動できるようにしてありますけど、、、
フュエルセーフって考え方はないのでしょうか?

何処からオイルが浸入するのか

デュアロジックを分解していきます

故障を起こすデュアロジックはこの部分に大量のオイルが浸入しています

デュアロジックを分解してみると、オイルの侵入する経路は、2系統有ることが解りました

①ミッションのシフトフォークを前後させるための軸のシールからギヤオイルの侵入

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この部分の中に有る縦方向の長いシャフトには、前後にオイルシールがあってそこからオイルが浸入していると予想できます(簡単には分解できなくなっています)

ソレノイド側のコネクターに侵入しているオイルは、なんと「ギヤオイル」だったのですね
今度、時間があるときにでも中のシールまで分解して確認したいと思っています。

②センサーへのデュアロジックオイルの侵入

リヤ側のセンサー

ソレノイドの反対側の端にはシフトの縦方向を感知しているセンサーがついています。
センサーとは言っても機械式の簡単な構造の物です。このセンサーにもオイルが浸入していることが有ります。

ただ、自分が点検してみた結果、このセンサーには侵入したオイルが外に抜ける溝が作ってありますので、こちらのセンサーへのオイル侵入は、あまり問題ではないのではないかと思いました。

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位置センサーに侵入するオイルの正体

こちら側にもシャフトのシールはついていると思うので、ギヤオイルが浸入している可能性が大きいのですが
この部分にオイルが大量に溜まる時は、構造上、デュアロジックのオイルが入りすぎている場合にも起きると思うのです。デュアロジックの作動油を交換するときは、量に十分注意が必要です

ここに溜まったオイルをリザーブタンクに戻す構造になっていますが、リザーブタンクにオイルが入りすぎていると逆流する可能性がある構造になっていました。

真っ黒になったデュアロジックの作動油

デュアロジック故障の予防整備

このオイル侵入による突然停止の予防をするには、軸に付いているシールを新品にすればよいのでしょうが、残念ながらそのような部品は在りません。では、デュアロジックユニットAssyでの交換をすればよいのですが、部品代だけで40万円近くしますので現実的ではありません。

なので、自分の場合はどうしたかというと

入手方法は詳しく書けませんが、自分の工場では、オイルのコネクターへのオイル侵入が少ないデュアロジックAssyの良品中古を入手し、数台分ストックしてあるので、上側(制御ユニット側)は車両のもともとのユニットを使い、シフトの作動を行うシールに問題が出ている、下側を付け替えてみました。

その結果、そのフィアット、納車後2年以上たちますが、いまだにミッションには異常は発生していないとのことでした。

ディラーさんと先日話してましたが、年式によってかなり部品番号が変わってきているそうで、最近の車両はデュアロジックの誤作動によるトラブルはほとんどないそうです。やはり、年々改良されているんですね。

新しめのデュアロジックは配線コネクタの形状が変更されています
では、年式が新しいデュアロジックは年式の古い車両に適合するのか?という問題が出ると思いますが、自分が作業した1400ccのフィアットでは、何の問題もなくボルトオンで交換出来ました。

当然ですが、デュアロジックAssy交換後は、作動油の交換と、診断機でのデータ初期化を行っています。
診断機をあててみると解るのですが、このシステム、結構細かい制御をしているんですよ

新しい型のデュアロジックコネクターの形状が変更されています

デュアロジック故障予防整備の結果

フィアット500クラッチ故障予防整備と共に、デュアロジック故障予防整備を施した自分のフィアット。
既に買い手が見つかって売れていき、それから約2年経ちましたが、「変速もスムーズで、ミッション関係の故障は発生していな」いとのことです。

もちろん、ユニット自体が中古なので、完全にメンテナンスフリーではなくて、定期的にコネクターのチェックと、溜まったオイルの除去が必要です。必要なら、ユニットを再度、良品中古に交換する用意があります。
自分からフィアットを購入されたユーザーさんには、安心して長く乗って戴きたいですからね。

フィアットの中古車を購入する前に

デザインも良くて、お洒落でちっちゃくて、手ごろな値段で買えるフィアットの中古車
女性にも人気があると思いますが、本文のように「走行中にギヤが抜けて走行不能になることが有る」っていう爆弾を抱えている車ですので

中古のフィアット500を購入されるときは、デュアロジックの予防整備と定期的な点検をしておくとよいですね、突然止まると、相当慌てることになりますよ

デュアロジックと共に、クラッチにも問題が出ますので、長く乗るつもりなら、できればクラッチの対策もするとよいです

今のところ、中古で程度のよさそうなデュアロジックを数点在庫しています。絶対直して乗りたくて、新品で交換(40万円)できない人はご相談ください。

フィアット500クラッチ故障の予防整備に続く

余談になりますが

1400ccのフィアット500には、ミッション以外にも弱点があって、それはタイミングベルトの劣化ですね

10万キロはもたないんじゃないかと思いますので、早めの点検をしておくとよいですね

お大事に

劣化して切れかけているタイミングベルト
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