ミッションの脱着と分解

アウディのミッション注意点

警告灯が点灯するアウディA73リッターのクワトロ
心配なので、悪化する前に修理して欲しいとの依頼です
とても正しい判断というか、そのまま乗り続けると、クラッチまで焼いてしまい、超高額な修理となります
警告灯が点灯し始めた初期なら、任せていただければある程度の金額で収まります
この手の輸入車に乗るときは、先手を打って修理できる余裕が必要ですね

今回はメカトロについているソレノイドバルブの故障ではなく、回転センサーの故障なので、ミッションの脱着、分解が必要です。
3リッターV6エンジンは、エンジンとミッションを繋げているボルトに手が届かないので、エンジンごと取り外す大手術となります。このミッションは超巨大で重量も半端ではなく、リフトに上げて下から外すというのは危険なので、床で上げての作業となります。
分解していて気付くのですが、ボルトのほとんどがアルミ製です。妥協のない軽量化に驚かされます。同時に、締め付けトルクの管理に悩まされることになります。

ミッションの分解

ミッションを分解するには、いろいろ特殊工具が必要になります。
画像の工具が無いと、緩めることが出来ないボルトが有ります

クラッチの分解と良否判定

AT、DSGミッション、どちらも修理やオイル交換の前に必ずコンタミチェッカーというもので、クラッチフェーシングが焼けていないかのチェックを行っています。
コンタミチェックはAUTEL診断機による故障診断と合わせて、当社車検時の特別なオプションメニューにしてある、大切な診断方法です。
輸入車が廃車になってしまう一番多い原因は、事故による全損だと思いますが、次に来るぐらい多いのはミッションの故障を修理できない(修理してくれる工場が無い)場合だと思います。内部の異常をいち早く察知する事が大切です。
単品メニューでも引き受けますので、ご相談ください。

コンタミチェックで異常が有りませんでしたが、クラッチは、実際に分解して点検します。
湿式クラッチAssyを外して分解、焼けていないか、厚みがあるか、歪みがないか、再使用できるかの点検です。アウディの湿式7速DSGのクラッチ版には回転方向があるので、組付け時に注意が必要です。注意深く分解すると、組付け方の法則がわかるようになっています。

クラッチAssyの脱着には、自作の特殊工具を使っています(色々なメーカーのミッション修理依頼が入るので、そのたびに特殊工具を購入するわけにはいかないのです)決して叩いたり、無理やり外したりしてはいけません。ちなみに、クラッチAssyとメカトロの脱着には順序が有って、間違えると高額な部品を破損させてしまったりします。一度、間違えてオイルポンプを破損してしまい、10万円飛ばしたことが有ります。
高い授業料でした。
ミッション修理って、気軽にできるものではなかったりします。

これがメカトロというやつです、ここについているソレノイドバルブが作動不良を起こすことが多いです
故障時は配線だけではなく、ソレノイドバルブも交換するのがお勧めです。
メカトロAssyは50万ほどするらしいので、自分の工場ではソレノイドを取り寄せて、バルブボディを分解清掃して修理しています。ユーザーさんは修理費用が大幅に節約できます。
以前修理したA4クワトロは、油温コントロールのソレノイドが故障していて、その結果クラッチ版のフェースが焼けて剥がれていました。逆に考えれば、クラッチ版が焼けている場合や変速時ジャダーを起こしている場合、配線キットと共に、ソレノイドも交換するのがマストですね。
不思議な事に、何故か日本ではソレノイド入りの修理キットが発売されていないようです。
新型車への代替え促進?

回転センサーの交換

これが今回故障していた回転センサー。入力軸と出力軸の回転数を検出しています、ミッション制御の基本となる大切なセンサーです。
ここまで分解するには、巨大なミッションを移動し、つりさげれるような設備が必要です。

回転センサーは純正品を使いました、これだけで7万円ぐらい。よく観察すると、配線の端子の素材が改良されているみたいでした。なので、相手側の配線も同時交換です。
この修理でもう一つ重要なのは、センサーの相手になる、軸側の鉄粉除去です。綺麗にして誤作動を防止してから交換します。

センサーを交換したら、いよいよ組付けに入ります。

アウディ湿式7速DSGミッション修理後編に続く

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